できる・できないのひみつ

  • 作成:2000/11/27 最終更新:2009/05/14
  • 著者:内山安二 初版:旧版・1976年3月10日 新訂版・1993年1月27日

ストーリー、構成

 全巻を通じた一貫したストーリーはありません。この本は、以下の2部構成となっています。

できる?できない?

やっ太、デキッコナイス、けつろんおしょう達が、「日本に百階建てのビルを 建てられるか?」「新幹線より速くてそう音の出ない列車はできるか?」などの 様々なテーマについて、話し合ったり試行錯誤したり殴り合ったりながら(ww) 考察・実験する。

げんかいにちょう戦した人々!

モンゴルフィエリンドバーグライト兄弟などの「今までできないと思われていた 事柄に挑戦した発明家・探検家等」の略歴を紹介する。

できる?できない?のストーリー展開

 前述のうちの “できる?できない?”のストーリー展開は 概ね以下のように進みます。
1. 何らかの事件をきっかけに、実現不可能そうな事柄に興味を持つやっ太「よーし!やったる!」
2. 即座に否定するデキッコナイス 「〜なんて できっこないす!」
3. フルコンタクトで本気(マジ)に殴り合う二人
4. 怒るブウドン 「ヤメレ食っちまうぞふたりとも!」
5. アイデアを出すアララちゃん(orデキッコナイス、ニャン太等)
6. そのアイデアを元に、挑戦するやっ太
7. 失敗するやっ太を諭す けつろんおしょう
8. 更に別の方法で挑戦するやっ太 ・・・・ 以下繰り返し
 各節によって多少の違いはありますが、だいたいこのような展開です。

特徴

やっ太の壮絶なバイタリティ

 子どものころ、やっ太の強烈なバイタリティと、どんなことでもとにかくやってみようとする その意思に、半ば呆れつつ感心していました。(たいていは失敗に終わるんですが)
 もっとも、そのバイタリティが無茶苦茶な方向に向かうこともあります。 「天気を変えることができるか?」の章で、台風にダイナマイトを投げ込んで消滅させようとして "そんなかんたんに消えてなくなるもんか。できっこないす。"と指摘されると、


(「できる・できないのひみつ(旧版)」、学習研究社内山安二、34ページ)

(; -_-)< や め ん か っ !

 台風の被害よりも、原爆の放射能とかの影響のほうがよっぽど危険って事が 理解できてないんですね。(このまま止めなかったら本気で原爆ぶち込みそうで怖い...) かなり無茶な性格です。結局けつろんおしょうに止められるんですが。

名キャラ デキッコナイス

 で、そのやっ太の意見に常に反対しまくり、ドツき合うのがデキッコナイスです。 (それにしても、この「デキッコナイス」って名前、すごく上手いネーミングだと思うんですが)
 やっ太の対極に位置するキャラで、とにかく何でもかんでも反対し、やっ太と殴り合います。 (でも時々「たしか、一気圧で、水を十メートル、もちあげるんだ。」と、助言したりもする) この、対照的な二人の掛け合いが私はすごく好きでした。

地球の裏側まで…

 できる?できない? の中で 最も笑えるのが 「地球のうらがわまであなをほって荷物を送れるか?」の章です。  アルゼンチンのおばさんに荷物を送りたいが、飛行機=送料が高い、船=時間が かかる・・・もっと速くて安い方法は無いかとデキッコナイスが悩んでいるところに、 アララちゃんが「地球のうらがわまであなをほって落とせばいいのよ。」と、物凄く無責任なアイデアを 出します。
 真に受けたやっ太がジェットモグラみたいな機械でマジに地球のうらがわまで 穴を掘り、荷物を落とそうとするが結局「トンネル内の気圧が高すぎて物が送れない」 と けつろんおしょうに指摘されて計画はオジャン・・・と言う話です。
 子どもの頃アホだった私は「本当に穴を掘って地球の裏にただで荷物を運べたら いいなぁ」と思ってましたが、今見なおしてみると むちゃくちゃですよね。 (地球の裏まで穴を掘れるだけの費用があるなら 普通に飛行機で送るべきですね) 第一、漫画の中でやっ太が使ったような機械が本当にあったとしても、 マントル層にぶち当たった時点で機械も人間も確実にオダブツだと思うんですが。

科学の限界について

 この本を読んでて思ったんですが、この本の隠しテーマの一つは、 「科学の力を持ってしても不可能なことがこの世にはある」 すなわち、 「科学にも限界がある」という事を、子ども達に教えることなのではないかと思います。 (この作品までのひみつシリーズは「〇〇はできる」「〇〇はすごい」と言うような感じで、 あまり「不可能」について語られたことはなかったんですが)

旧版と新訂版の相違点(らしい)

 新訂版は基本的に殆ど旧版と変わっていませんが、幾つか描きかえられている個所があります。

  1. 6ページ…平成5年完成の横浜ランドマークタワーについて記述したコマが入っている。
  2. 9、10ページ…「霞ヶ関ビル」が「東京都庁第一庁舎ビル」に変わっている。
  3. 34ページ…まるまる1ページ描きかえられている。(以下に各コマの台詞を記載)

(旧版)「すばらしい、つくるぞ!」「ぼくが、やったる。」 「欠点は、材料費がかかることだ。じしゃくの鉄やコイルの銅線が高くて、なかなかできん。」 「ブクらもやっ太の手伝いをしよう。」「まず、じしゃく集めだ。」 「ブワッ?」(背負っていた磁石がトラックにくっついてしまうブウドン) (九州行きのトラックにくっついたまま運ばれてしまうブウドン) 「わあい、ブウドンがじしゃくで九州に行っちゃったあ。」(にゃん太) 「えっ! もう、リニア・モーターカーができたのかい。」(おしょう)

(新訂版)「現在各国がリニアモーターカーの実用化に向けて研究を進めている。」 「しかし、実用化するとなると、解決しなければならない問題がたくさんある。まず、材料費がかかることだ。」 「それに、完全な浮上式となると、ものすごい電力が必要となる。」 「磁石から発生する電磁波が人体に与える影響も無視できない。」 「こうした問題を解決し、実用化するための実験線が、山梨県にあり、時速五百五十キロメートルを記録している。」 「二十一世紀には、時速五百キロメートル、東京、大阪間を一時間で結ぶ 夢の列車が走っているかもしれない。」(おしょう) 「すばらしい。早く乗ってみたいな。」(やっ太達)

参考までに旧版、新訂版の34ページの最後のコマを以下に引用します。


〔旧版34ページの最後のコマ。〕
(「できる・できないのひみつ(旧版)」、学習研究社内山安二、34ページ)


〔新訂版34ページの最後のコマ。〕
(「できる・できないのひみつ(新訂版)」、学習研究社内山安二、34ページ)

この他にもいくつか台詞、コマの絵が変わっているところがあります。