宇宙のひみつ(旧版)
- 作成:2001/06/16 最終更新:2009/5/12
- 著者:あいかわ一誠
- 初版:昭和47年11月25日
ストーリー、構成
(1)宇宙人への手紙
宇宙の果てをさがしてアンドロメダ星雲から地球の近辺にやってきた 宇宙人ピコの 乗っている光子ロケットと、地球の子どもたち(星一、ジュリの二人)が乗っていたサターン型ロケットが (なぜこの二人がサターン型ロケットに乗っていたのかは後述)衝突。 二人はピコに救出される。
(「宇宙のひみつ」旧版、学習研究社、あいかわ一誠、5ページ)
光子ロケットが気に入った二人はピコとともに宇宙を見学することに。
(2)もえる星・太陽
太陽の近くを通った星一・ジュリ・ピコは、太陽の性質等をスーパーテレビ(光子ロケットに 搭載されている<のう波を感じて、見たいもの、知りたいこと、なんでもうつしてくれるテレビ>)に聞く。
その後、星一たちは電波通信で地球に連絡をとって、月を見学してから地球に帰ると告げる。
(5)地球のきょうだい星
宇宙旅行が気に入った星一たち。 他の星も見たいと言い出す星一とジュリの希望に答えて地球のきょうだい星(太陽系の惑星)の 見学に行くことに。星一はほかの惑星に宇宙人がいることを期待する。 水星、金星、火星、木星、土星の順番で太陽系をまわるが、どの星も 生物が住める環境ではないことに落胆する星一。 (天王星以降はスーパーテレビで確認するのみ) 途中で すい星についても学ぶ。その後、星一たちは地球への帰還の道に。
(6)かがやく星ざ
地球に帰還する途中、北斗七星やカシオペヤ座などの星座や、恒星の性質などを勉強する。
特徴
ひみつシリーズ第一作
この「宇宙のひみつ」がひみつシリーズの記念すべき第一作です。 いつの時代も子ども達の興味を引く事柄の 一つであろう「宇宙」について扱っているだけあって、 おそらく人気の高い作品の一つでしょう。私も子どもの頃何度も読み返した記憶があります。 なお、本作は1993年に新訂版に変わるまで、20年以上再販が出つづけていたようで、 自分の持っている版の一つを確認してみると 昭和59年の時点で第53刷です。 本作の人気の高さが伺えます。
本作品の魅力 - キャラ(ジュリたんハァハァ)
本作の魅力のひとつは登場キャラの良さにあります。 宇宙人のピコ、 地球人の子供 星一・ジュリ、 そして助言役のスーパーテレビと、 どのキャラも容姿・性格・話し方など、通常の少年漫画に比肩しうるレベルまで 個性化(キャラ立ち)がしっかりとされています。
なかでも、本作のキャラの中で最も印象的なのは何と言ってもジュリでしょう。
(上: 「宇宙のひみつ」旧版、学習研究社、あいかわ一誠、8ページ) (下: 「宇宙のひみつ」旧版、学習研究社、あいかわ一誠、18ページ)
上記引用コマをご覧になると分かると思いますが、 (今風の萌えアニメ系の絵柄ではありませんけれど) ひみつシリーズ登場の女の子キャラの中でも屈指の美少女といってよい容姿と、 作中で「さすが天才少女…」と誉められるほどの賢さと、 星一におちょくられたときのリアクション(笑…(下の引用コマ参照) オレが子供の頃一番ときめいていたキャラでした。
(「宇宙のひみつ」旧版、学習研究社、あいかわ一誠、29ページ)
ただ、いま再びこうして読み返してみると、良く理解できない状況等が あるのに気づいてしまったので、一応ツッコんでみたいと思います。
ツッコミどころ
光子ロケットとサターン型ロケットの衝突…
なぜ星一&ジュリがピコと出会ったのかというと、星一&ジュリが中に入って見学していた サターン型ロケットが まちがってスイッチが入って宇宙に飛び出し、そのサターン型ロケットが たまたま地球近辺を飛んでいたピコの光子ロケットと衝突したためなのです。 (なお、衝突したところは冒頭で描かれているが、星一&ジュリがサターン型ロケットを見学していた 様子などは具体的に漫画の中で描写されていないため、いまいちこのヘンわかりづらいです)
しかし、「光子ロケット」ってことは光速に近いスピードで飛んでいるわけですから、 それと衝突なんかしたら一体どうなるんでしょうか。
漫画ではサターン型ロケットがばらばらになって 宇宙服着用の星一とジュリが放り出されていましたが、 その程度じゃすまないと思うんですが…
(たまたま衝突した時は光子ロケットが減速していたという解釈も可能ですが)
なぜピコは宇宙のはてを目指しているのか?
ピコが宇宙のはてを目指して旅をしている理由がいまいち理解しづらい…というか、 恒星間飛行ができるくらいの科学力を持っているんだったら、わざわざ実際に行って見なくとも 「宇宙のはて」について調査する手段はいくらでもあるんじゃないでしょうか。
また、冒頭と最後でピコは(たった一人での旅のせいか)退屈がってますが、 スーパーテレビがあるのならば それこそアニメでも娯楽作品でもAV(←おい)でも いくらでも見れるはずだから「退屈」することもないのでは… (それとも旅をしている時間が長すぎるため既にあらゆる物を見飽きてしまったのか?)
この他にも、「なぜピコと星一たちは普通に日本語で会話できるのか」 「パイオニア十号などの、地球についての知識をいろいろ知っているピコが なぜ単なる地球の一生物であるクモを怖がるのか」 「そもそも星一たちが地球外生命体に遭遇した時点で、それこそ全世界で 超特大々々々ニュースになるはずなのに なぜ『大ニュース』程度で済んでいるのか」 など、あらためて読みなおすと ガキのころ気づかなかった疑問が噴出してちょっと困りましたが(笑 、 全体としては話の展開等も上手くまとめられ、また宇宙に関する知識の紹介についても 資料を的確に用いてあって、子ども達が宇宙に対する興味や感心を抱いてくれるような 構成となっています。
補足:時代による内容の変化
これは「宇宙のひみつ」だけでなく、ひみつシリーズの作品のうち長い間再販されていたものに 共通しているのですが、刷によって特定のコマなどの内容が書き換えられていることに 最近気づきました。
例として、本作の第5章 「地球のきょうだい星」中の、火星の説明のコマの一つを以下に引用します。
(「宇宙のひみつ」旧版(発行年月日・刷数不明)、学習研究社、あいかわ一誠、72ページ)
これは、1973〜1976年辺りに出版されたらしい刷(自分の持っているこの刷はカバーがないので正確な 発行年月日・第何刷かは不明。141ページの星一のセリフから年月日を判断した)の72ページのコマです。 しかし、昭和55年(1980年)の第37刷では、このコマは以下のようになっています。
(「宇宙のひみつ」旧版(1980年 第37刷)、学習研究社、あいかわ一誠、72ページ)
コマの中の「知的生物のそんざいが考えられる。」というところが、 何かで塗りつぶされたように消されています。 なぜこのような処置がされたのかは分かりませんが、おそらく最初のほうの刷が 出版されていたころにはまだ「火星には知的生命体がいるかも知れない」と考えられていたからでしょうか? しかし第37刷が出た頃には、火星に知的生命が存在する可能性は否定されたため、 科学的にそぐわない記述として 消されたのかもしれません。
(; -_-) < それにしても、第37刷のコマは背景は灰色なのに当該部分が不自然に白く 塗りつぶされていたので、最初見たとき違和感を覚えとった