コロ助の科学質問箱
- 作成:2001/8/12 最終更新:2009/05/14
- 著者:内山安二
- 初版:1972年11月25日
ストーリー、構成
本全体に一貫するストーリーはありません。 この本の構成は、
1. 生活などのこと
2. 乗り物や機械のこと
3. 地球や宇宙のこと
4. 動物や植物のこと
5. 空気のこと
6. 天気や気象のこと
の6章に分かれています。 ただしこれは旧版の章立てです。新訂版の章立てについては後述。
1章、3〜6章には長いもので6ページ、短いもので1ページ単位で、色々な疑問について 検証しているまんがが平均10数本ずつ載っています。 2章は見開きでホバークラフトなどの乗り物の断面図とその機能等の説明。 各まんがの内容はというと、コロ助、ニャーゴ、チュー助の3人(?)が、 科学に関する様々な疑問について考え、大学の教授や専門家に質問しに行き、 答えを見つけ出す…というもの。
〔このように、「○○(場所)のXX先生に聞こう」と言って質問に向かう。〕
(「コロ助の科学質問箱(旧版)」、学習研究社、内山安二、35ページ)
特徴
ひみつシリーズ最高傑作の一つ
結論から申し上げますが、この本こそ ひみつシリーズの最高傑作の一つと私は考えます。 子どものみならず 大人が読んでも新鮮で面白い作品となっています。
一つの文章にしようとするとどうしても うまくいかないので、この作品の長所を箇条書きで 挙げますと…
- 「子どもにもわかりやすく、かつ内容の要点を的確に押さえた説明」
- 「キャラの親しみやすさ」
- 「台詞回しの巧妙さ」
などです。特に,コロ助たちが大学教授などの人たちに さまざまな事象についての話を聞きに行くまんがは、どれも見事で 読んでいて引きつけられます。
作品内での議論
なかでも良かったものの一つは1章(生活などのこと)の「まさつはないほうがいいの」です。 以下にかいつまんで紹介します。
ニャーゴ「まさつってニャンだ?」
コロ助「まさつってのはな、ほら、あれだ。」
(まさつについて紹介するコロ助。その後,まさつがあるほうがよいか否かについてモメる二人)
(ここで,古代エジプトでの、丸太やころを使って石を運ぶ方法や、車輪の発達の歴史について教えるコロ助)
コロ助「どうだ、ニャーゴ、人間はこんなに苦労しているんだぞ。 交通の発達は、まさに、まさつとの戦いだ。」
ニャーゴ「うーん そういえばそうだけど……」
(ニャーゴは「逆に、まさつがなければ滑ってしまうので車も人も走れない」と主張)
コロ助たち「うーん、わからなくなったぞ。」
(そしてコロ助達は、
という結論にたどり着く。)
で、国立科学博物館の青木氏に まさつについて質問しに行く…といった具合になっています。
ここでは,コロ助達に議論(ディベート?)をさせています。「まさつ賛成派」のニャーゴと「まさつ反対派」のコロ助との間で意見を戦わせ、 そして、議論の最終地点において、「まさつがありすぎれば物は運べない→しかし まさつがなくとも物は動かせない→ つまり、まさつを減らすだけでなく上手に利用することが必要だ」という、二人のもともとの意見を止揚した結論を導き出すことによって、作者が読者に理解させたい内容を 読者に感情移入させながら上手に伝えているわけです。
それも、決して難しい表現には走ることなく、子ども達にわかりやすい形で議論を進めているところは、読んでいて本当にすごいと感じます。*1本作は内山安二の漫画家としての力量が、十分に発揮されているまんがと言えます。
旧版と新訂版の相違点(らしい)
- 新訂版では、旧版の最後の章(天気や気象のこと)がカットされており、 また5章(空気のこと)も幾つかカットされている。
- 2章の内容が、 旧版:「風力発電」「原子力船むつ」「ジャンボジェット」「ホバークラフト」「電気自動車」のしくみの紹介 新訂版:「スペースシャトル」「ボーイング767」「ソーラーカー」「超伝導電磁推進船」 「リニアモーターカー」のしくみの紹介 というふうに変更され、見開きの絵も書きかえられている。
- 先頭のカラー資料が幾つか変わっている。
などの相違点があります。また、他にも台詞・まめちしき等において書き換えがありました。
*1:簡単そうに見えて,なかなかこうゆうのは書けない……