植物のひみつ

  • 作成:2009/05/14
  • 著者:藤木輝美
  • 初版:昭和49年6月30日

キャラク

  • ツルナ博士,ホップ君,メロンちゃん,ことりのピー,犬(名前不明(w))
  • ミニドリップ号


(ツルナはかせじゃなくてツルナはくしなのね……「えらあーい大先生」という説明がいい)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P1〕

ストーリー、構成

植物のなかまわけ

ツルナ博士の研究所(?)にホップ君らがかけこんでくる。
「はかせたいへんです〜〜」「どうしたね」
「となり町にコレラがでたの!!」
恐れるホップ君たち。「だれかが外国から菌をもちこんだのじゃな。」
「キン」がなんだかわからないホップ君。博士が伝染病の菌の説明をし,「細菌つまりバクテリアという植物がおこすのじゃ」という。バクテリアが植物の一種と知って驚くホップ君たち。はかせは,植物の定義を説明する。シダ植物やきのこ,海草などの性質の説明によって植物に興味をもつ子供ら。その後,はかせの提案で世界の植物を見に行く旅行にでることに。

世界のびっくり植物

ホップ君らは はかせの部屋の机の上の鉛筆大の機械に驚く。


〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P18〕

この「空はもちろん陸も地中も水中も自由じざいじゃ。ハハ…」と博士が自慢するマシン・ミニドリップ号で旅立つことに。博士らは,ミクロナイザーという薬(さわると大きさが千分の一になる)で縮小化してミニドリップ号に乗り,沖縄のマングローブ,マライ群島のラフレシアウツボカヅラなどのふしぎな植物を見に行く。*1

根のしくみとはたらき

ミクロナイザーを利用してさらに小さいサイズになった博士らは,ミニドリップ号で何かの木(作品中では種類が明示されていない)の根の近辺の地中にもぐり,根毛から根の中に入り込む。根の特徴がいろいろ説明される。導管*2から茎のほうに向かって進む博士たち。

茎のしくみとはたらき

根から葉に向かう途中で,茎の導管や師管*3の特徴のうんちくが披露される。途中で師管の細胞のあなにミニドリップ号のドリルがはまり,ピンチになったりしながらもなんとか切り抜け,葉に向かう。

葉のしくみとはたらき

葉の仕事である光合成の仕組みが説明される。メロンちゃんたちは植物の働きに感心する。ほかにも,葉が水蒸気を放出する様子なども説明される。


(この,すばらしい工場 というのが伏線です)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P56〕

花と花粉のひみつ

博士が読んだ本の「花は葉が変身したものである(by ゲーテ)」という言葉が信じられないホップ君たち。ムキになった博士は,ミニドリップ号のタイムマシンで過去に行き,ゲーテに会いに行く。*4
なぜか日本語をバリバリ話すゲーテに諭されたホップ君らは,スイセンの花の花びらなどを調べる。

たねのひみつ

たねに興味をもったホップ君は,まめを水栽培して発芽の様子を調べる。まめが発芽し葉を出していく様子が語られる。「まめ君がんばれ!!」

植物の呼吸と動物

「はかせ!!たいへんでえす!!」
泣きながら研究所に駆け込むホップ君とそれを追うメロンちゃん。
「うちのキンギョが毎日二、三びきずつ死んでいくんです!!」
博士と原因を考えていくうちに,せまい水槽に22匹も金魚を入れていたことが判明。博士たちは,ミクロナイザーで金魚と同程度のサイズになり,博士が飼っている金魚に酸素についてインタビューする(金魚語の通訳機があるらしい……)。水草光合成で放出した酸素を金魚が吸い,金魚がはきだした二酸化炭素水草がすって光合成につかうというサイクルが説明される。
ホップ君の金魚が死んだのはせまい水槽にたくさん金魚をいれて酸欠になったことが判明……動物は,植物の酸素が必要と理解するホップ君ら。
「動物は植物がなくては生きていけないかんけいにあるのじゃ。」

植物と人間の関係

(後述)

植物なんでも質問箱

植物に関するいろいろな質問とその答えが,各1ページ程度で説明される。

特徴

本書の特徴は,ツルナ博士の発明品の数々です。ミニドリップ号やミクロナイザーなど,奇想天外なアイテムが次々と登場します。これらのアイテムによって,動物などと比較して地味(?)なテーマである植物についても,飽きさせずに漫画中でうまく説明しているのがポイントです。(それにしても,タイムマシンで過去に行くわ,金魚と話すわで,なんでもありですねこの作品)
また,最後の章である「植物と人間の関係」では,「植物がなくなったらどうなるか?」という架空の状況が説明されています。これが子供のころ 結構トラウマだったので紹介します。

「植物と人間の関係」の荒廃世界

前の章で,人間も含めた動物が植物と関係があるとわかったものの,ややぴんと来ないホップ君たち。そこで博士たちはミニドリップ号で百五十年後の世界に旅立つ。
「ただし過去の世界とちがって、ほんとの世界になるか、うその世界になるかは、人間しだいでかわる世界なんだよ。」
百五十年後の世界に入り込んだ博士たち。なんと,真っ暗で寒いおそろしい世界であった。スモッグが地球をとりまいて日光をさえぎっている。
「太陽の光が地上にとどかないから、光合成ができなくて…………」「草も木も全部死んじゃったんだ。」
博士はミニドリップ号を地上に降ろす。枯れ木や動物の骨がちらばる死の世界。人間たちは酸素ボンベをしょって歩いている。


(この一連のコマがトラウマ)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P109〕

「公害をまきちらす工場がめちゃくちゃ地球上にふえたから、こういうことになったのだ。」「人間の工場は、緑の葉っぱの工場にはぜったいかなわないのだ。」
ホップ君たちは,荒廃した世界で苦しむ人々の「酸素よこせデモ」や怪しげな工場(酸素などを生産しているらしい)を見ておそろしくなる。しかし,もとの世界にもどるとき,博士はこういう。
「ハハハ…いま見てきた世界はきみたちの力で、うその世界になるかもしれないのだ!」「さあ、ぼくたちのいた地球にもどろう。そして、みんなで植物や動物をまもる努力をするのだ。」

このような感じで,公害問題への批判や植物の大事さなどを説明しています。この章が子供のころえらいトラウマでした。

ツッコミどころ

ホップ君が直情径行すぐる件

本書の主人公っぽいホップ君ですが,小さくなった状態でウツボカヅラの消化液に入ってものんきに泳いでたり,けっこうアレな性格です。さらに,えらい早急な性格でもあります。
「植物の呼吸と動物」の章の最初のほうで,金魚が死んだ原因がわからず,悩んでいるうちに「だれかが毒を入れたのかもしれない」と,なんの根拠もなしに思いつくホップ君。その後,「ぼくのうちへキンギョを見にきたのはメロンちゃんだけだ」「ひょっとして、きみが毒を入れたんじゃない?」といきなり決め付ける(当然怒るメロンちゃん)……お前,もうちょっと考えて行動せいといいたくなります。その後,メロンちゃんの冤罪が証明され 謝るのですが。

ツルナ博士の小学生チックな言語感覚

また,ツルナ博士もけっこうお茶目(?)感じのキャラです。冒頭のコレラ騒ぎのところで,菌が増殖する様子に驚くホップ君たちに対して,


〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P109〕

博士,あなた一応教育者(?)なんだから「うんこ」などという小学生テイストの強い言葉を使うのはどうかと……「便」とか「糞」とか(百歩譲って)うんちとかいろいろあるでしょ(でも上の引用コマで一番問題なのは「やだあ うんこなんて食べないじゃない」などと口走っているメロンちゃんなのだが)。
こんな感じで 笑える点もけっこうあります。

*1:この過程でホップ君がいろいろピンチに立たされたりします

*2:根から葉のほうに水分を送り込む血管のような管

*3:葉で作った栄養分を根に送る管

*4:それにしても,ミニドリップ号だけでもすごいアイデアなのに,これだけいろいろ発明してる博士って…