世界の国ぐにびっくり旅行

  • 作成:2003/2/11 最終更新:2003/08/21
  • 著者: 内山安二
  • 初版: 昭和52年10月20日

ふしぎな飛行機と気球で世界旅行に出発。みなさんが知りたい、 いろんな国のおもしろいことが、つぎつぎにわかります。
(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、1ページ)

ストーリー、構成

アメリカ合衆国

"おじさんが、何か発明したそうよ。"
"うん、行ってみよう。楽しみだね。"
 大ちゃん、しょうこちゃん、ニャンゴ(猫)、物知りネズミのチュー、ブル(犬)、 トン(ブタ)の5人(?)が、発明はかせのおじさんに会いに行く。 おじさんが見せたのはなぞの旅行カバン。
突然カバンがポンと音を立てて開き、飛行機に変化する。


(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、7ページより)

 大ちゃんたちは好奇心旺盛で飛行機に乗り込んで触りまくる。そのうちに、何かのスイッチが 入って飛行機が飛び立ってしまう。 さらにニャンゴとチュー(この2匹はいつもケンカしまくる)のケンカのせいで ブルとトンが振り落とされ、飛行機は大ちゃん他4名(?)を乗せてはるか遠くへ。おじさんは急いで気球に変化するバッグを取り出す。


(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、10ページより)

 おじさん、ブル、トンは気球に乗り込んで大ちゃん達を追うことに。 これ以後、飛行機で旅する大ちゃん達(大ちゃん、しょうこちゃん、ニャンゴ、チュー)と、 後を追いかけるおじさん達(おじさん、ブル、トン)の2チームで話は進行していく。
 大ちゃん達はアメリカ西海岸に到着。物知りのチューがアメリカ合衆国の成立の過程 (コロンブスの到着、イギリスからの移民、アメリカ先住民との交流、独立戦争)等を説明する。
"教えてやろう。まず歴史からひもとくと、アメリカはまだ、わかい国なんだ。"
"本格的に、移民がはじまったのは、一六二〇年以後のことだよ。"
"それから、アメリカもひらけ力もついてきたが、イギリス本国がなんだかんだと" "自分かってのことを決めるので、アメリカはおこった。そして…"
"そこで、とうとうイギリス本国と、戦争になったのです。" "この戦争を、どくりつ戦争といいます。数年続いて、やっとどくりつができました。"
 説明の途中、ニャンゴは得意げなチューにいらついて、機上でケンカを始める。 暴れた影響で飛行機はハイウェイに不時着、はずみでチューがボタンを押したため 飛行機はカバンに戻ってしまう。飛行機が使えないので、たまたま車で通りがかった アメリカ人男性(カウボーイのパイポさん,デキッコナイスに似てる容貌)に、車に乗せてもらうことにする大ちゃん達。
 大ちゃん達は車上でパイポさんからカウボーイやハイウェイ、アメリカの自動車産業の 話を聞かせてもらう。…しかし話の途中で車のガソリンが切れる。 パイポさんは一緒に車に乗せていた馬のウマ(まぎらわしいが本当にこういう名前)に 車を引かせて移動を続ける。道すがら、パイポさんのアメリカの農業や鉄道の話もあり。
"農業は、ほとんど機械化されているよ。たねまきも、刈り取りも、全部機械さ。"
"鉄道のキロ数は約三十六万キロ。全世界の鉄道の三十パーセントにあたるよ。"
 その頃、気球のおじさん達はアメリ東海岸に接近し、ハリケーンに巻き込まれながらも何とか ニューヨークに到着。自由の女神、マンハッタンやホワイトハウスなどの名所の説明などの後、 ホットドッグで腹ごしらえしながら大ちゃん達を探すが、ちょうど大ちゃん達とすれ違う辺りで 腹がいっぱいになったせいで眠くなり、居眠りしてしまう。大ちゃん達もおじさん達もお互いに 気づかず、通り過ぎてしまう。おじさん達の気球はそのままアメリカを通り過ぎてイギリスに。
 そして大ちゃん達の車を引いていたウマが、辛くてついにキレて車からカバンを蹴落としてしまい… すると、カバンがまた飛行機にチェンジする。大ちゃんたちはパイポさんらにお礼をいい、 元に戻った飛行機でアメリカを後にし、大西洋を横断してイギリスに向かう。

●イギリス

 おじさん達はイギリスにつく。 キルト(スコットランドの民族衣装)を来た男性を「おばさん」と呼んでしまい カルチャーショックを受けるトン。おじさん達はイギリスの名所を旅しながら、 その歴史や文化について説明する。
"イギリスは、歴史の古い国だよ。"
"どういうわけかイギリスは、女王の時代に栄えるといわれている。"
おじさん達とは別にイギリスについた大ちゃん達は、おじさん達とすれ違い、スモッグ漂うロンドンに 着地しようとするが、ニャンゴが誤っておりたたみのボタンを押してしまい、空中で飛行機がカバンに戻り 4人は閉じ込められる。 カバンは英国紳士風男性に拾われる。男性が移動するその経路でチューが、ロンドンの地下鉄や 蒸気機関車について説明。男性が「どうすりゃいいんだ、このラジオは…」といらついて カバンを殴り、カバンは再び飛行機に戻る。
 その後、ロンドン上空でグリニッジ標準時の説明をするチュー。威張るチューに怒って (またもや飛行機の上で)暴れまわるニャンゴが振り回した棍棒が誤って大ちゃんに当たり、 大ちゃんが目を回し操縦不能になる。墜落寸前にしょうこちゃんが押したボタンの働きで 飛行機はカバンに変化し、海に落ちる。


〔高橋註:別のボタンで潜水艦にもなるカバン…すげー〕
(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、65ページより)

●フランス

ドーバー海峡に落ちた大ちゃん達のカバン潜水艦はフランスを目指す…が、方向を誤ったのか フランスにはつかず、地中海に流れていく。一方おじさん達は大ちゃん達を探しにフランスへ。 (この章では活躍するのは,
ほとんど おじさん達のみ) この章ではエッフェル塔凱旋門などの名所や、エスカルゴ、ぶどう酒、フランスパン等の フランス名物の食べ物などが紹介される。

●イタリア、スイス、ドイツ、オランダ

 大ちゃんらの潜水艦はイタリアに上陸。海中でチューとけんかしていたニャンゴが 逃げるチューを追い掛け回す過程で、ピサの斜塔ポンペイの町等の紹介がなされる。 (以後、ヨーロッパ大陸の国の紹介は ほとんどこの2人のみで行われる) 2人が追いかけたり 逃げ回ったりなんだりしながら、各国の名物・名所の説明がある。

ギリシャスウェーデン

 大ちゃん、しょうこちゃんはニャンゴらを探すため、カバン飛行機でギリシャスウェーデンを回り、 北ヨーロッパ海上にいたニャンゴらを救出。ギリシャ名物のオリンピック、スウェーデンの鉄鋼や ノーベル賞の説明がある。

●アフリカ、インド、マレーシア、フィリピン

 大ちゃん達がヨーロッパで色々やっていた頃、おじさん達はアフリカ上空。アフリカの 気候とキリマンジャロ山の説明があった後、(なぜかアフリカの各国についての説明はない) 一気にアフリカを過ぎて東南アジアに着くおじさん達。 (以下、紹介される各国の名所・名物等はリストで箇条書きにします)

  • インド…タージマハル寺院、牛、カレー
  • マレーシア…ゴムの木
  • フィリピン…段々畑(これだけかぃ…)
ソビエト連邦、モンゴル、中華人民共和国

 大ちゃん達のほうはヨーロッパからソビエト連邦へ。ここでもニャンゴとチューの争いで 飛行機が空中でカバン化したり、カバンが飛行機に戻りそこなって自動車もどきになったりと 色々なゴタゴタがありつつ、大ちゃんらが各国(ソ連・モンゴル・中華人民共和国)を回り、 その名所・気候の紹介がされる。

●カナダ、南アメリカ

 中国の台風にあおられて一気にカナダまで(?)流される大ちゃん達の飛行機。 そして、物凄い勢いでアメリカも通り過ぎ(ちょっと強引だと思った)、南アメリカに到着。 ここでもアフリカの章と同様、南アメリカの国の紹介等はなく、気候の説明のみ。 南アメリカ上空でコンドルに衝突し、迷走した飛行機が何かに衝突!!… …それが何とおじさん達の気球で、ようやく会えた大ちゃん達とおじさん達。


(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、132ページより)

衝突で気球に穴があき、落っこちたのはオーストラリア。オーストラリア及び ニュージーランドを回った後、帰ろうとするおじさん達。
"さて、日本へ帰るか。"
と言っておじさんは飛行機カバンを 蹴っ飛ばす…が、(酷使しすぎたせいか?)ばらばらに壊れてしまう。 大ちゃんの案で、気球にばんそうこうを貼り付けて直し、みんなは気球に乗って 日本へ帰るのであった。

特徴

 本作品は「ひみつシリーズ」の中でも人気作の一つです。 (当サイトの掲示板のご感想の書き込みや、2ちゃんねるの学研まんが関係の スレッド等で 本作品が話題に上ることが多い) 自分はひみつシリーズの作品は小さい頃何度も読み返しましたが、 本作品は幼少の頃1、2回読んだだけでした。(本をなくした為) しかし、本作品が与えてくれた各国の名物や印象は今も残っており、 今回読み返してみて 本作品の面白さを再確認しました。

「飛行機カバン」の魅力

本作品の魅力の一つは何と言ってもこの「飛行機カバン」(勝手に命名)でしょう。 冒頭で引用したコマを見たときの驚きは今も忘れられません。 旅行カバンの両側が開いて それが飛行機に変化するという発想の斬新さ。 しかもこの他にも、潜水艦になったり、自動車もどきになったりと、 このカバンは本作品中で縦横無尽の働きをします。 このようなギミックを考え出す内山安二の発想力の凄さには本当に驚きます。

行動するチームを二つに分けたこと

もう一つ印象に残ったことは、行動するチームを二つに分けたことです。 通常、ひみつシリーズでは博士役、男の子等が1団体で行動することがほとんどで、 平坦な展開が多いのですが、本作品では冒頭で大ちゃん達とおじさん達が離れ、 おじさん達が追いかける形で2チームが別々に行動します。 そして、ここも内山安二のストーリー展開の上手い所なのですが、 何回かこの2チームがすれ違うのですが、あと少しのところでお互いに気づかず 結局会えずじまいでまた離れていく…という風に話が展開するため、 「一体いつおじさん達と大ちゃん達は再会できるんだろう?」と、子供心に 心配しながら読んでました。先が気になるようなストーリー展開をするという意味で、 この方式は非常に有効だったと考えられます。 (ただ、以降のひみつシリーズではあまりこういう形式がとられたことがない)

各国の名物や風習等

また、本作品で紹介される各国の名所・名物や風習も、本作品の面白さの一つです。 特に印象的なのは、「フランスでは小学校に落第がある」ということです。 〔註:本作品の初版がでた当時のことで、もしかしたら現在は制度が変わっているかも〕


(「世界の国ぐにびっくり旅行」、学習研究社内山安二、76ページより)

(追記:webでの検索では,学びの場.comなどが見つかった)
 他にも、イタリアの「ピサの斜塔」、インドの「タージマハル寺院」などの建物や、 フランスのエスカルゴ・フランスパン、ドイツのソーセージやビール等の食べ物、 また「インドのカレーには牛肉が入ってない」「オーストラリア等では12月あたりが暑い」 「イギリスの正式名称は グレートブリテンおよび北部アイルランド連合王国」といった 知識についても、本作品で始めて知りました。 各国の 日本とは違った習慣等を分かりやすい形で学べることが、 本作品の学習まんがとしての特色です。

ツッコミどころ

 もっとも、本作品にも いま見直すと結構不思議な点があるので まとめてツッコみます。
1. 飛行機で飛んでいった大ちゃん達を「気球」で追いかけようとしたおじさんの発想 (飛行機と気球じゃスピードが違いすぎないか?)
2. アメリカやイギリスはかなりページ数をとって紹介されているのに、後のほうの国々は 結構紹介がそっけないこと(フィリピンなんて約1ページのみですよ、1ページ)
3. 更に、アフリカや南アメリカに至っては国の紹介すらないこと(笑)
 おそらく、ページ数の都合でかなりの国を省略したのだと思いますが、 (もし当時のすべての国をアメリカと同程度のページ数(約40ページ)で紹介したら、 …4000 ページぐらい必要になる) アフリカ大陸や南アメリカにも、エジプト、アルゼンチン、ブラジル等、 紹介すべき国は結構あると思うのですが… *1 じっさい本作品の後半(ヨーロッパ以降)は、1〜3項前後の少ないページ数で、 物凄い勢いで各国が簡潔に紹介されるのが笑えます。

*1:実を言うと わしは本作品のために、中学生になるまでアフリカ大陸には“アフリカ”っていう 国が一つだけあるのかと勘違いしていました