コロ助の科学質問箱

  • 作成:2001/8/12 最終更新:2009/05/14
  • 著者:内山安二
  • 初版:1972年11月25日

ストーリー、構成

 本全体に一貫するストーリーはありません。  この本の構成は、
1. 生活などのこと
2. 乗り物や機械のこと
3. 地球や宇宙のこと
4. 動物や植物のこと
5. 空気のこと
6. 天気や気象のこと
の6章に分かれています。 ただしこれは旧版の章立てです。新訂版の章立てについては後述。
 1章、3〜6章には長いもので6ページ、短いもので1ページ単位で、色々な疑問について 検証しているまんがが平均10数本ずつ載っています。  2章は見開きでホバークラフトなどの乗り物の断面図とその機能等の説明。  各まんがの内容はというと、コロ助、ニャーゴ、チュー助の3人(?)が、 科学に関する様々な疑問について考え、大学の教授や専門家に質問しに行き、 答えを見つけ出す…というもの。


〔このように、「○○(場所)のXX先生に聞こう」と言って質問に向かう。〕
(「コロ助の科学質問箱(旧版)」、学習研究社内山安二、35ページ)


(「コロ助の科学質問箱(旧版)」、学習研究社内山安二、36ページ)

特徴

ひみつシリーズ最高傑作の一つ

 結論から申し上げますが、この本こそ ひみつシリーズの最高傑作の一つと私は考えます。  子どものみならず 大人が読んでも新鮮で面白い作品となっています。
 一つの文章にしようとするとどうしても うまくいかないので、この作品の長所を箇条書きで 挙げますと…

  • 「子どもにもわかりやすく、かつ内容の要点を的確に押さえた説明」
  • 「キャラの親しみやすさ」
  • 「台詞回しの巧妙さ」

などです。特に,コロ助たちが大学教授などの人たちに さまざまな事象についての話を聞きに行くまんがは、どれも見事で 読んでいて引きつけられます。

作品内での議論

 なかでも良かったものの一つは1章(生活などのこと)の「まさつはないほうがいいの」です。 以下にかいつまんで紹介します。
 ニャーゴ「まさつってニャンだ?」
 コロ助「まさつってのはな、ほら、あれだ。」
(まさつについて紹介するコロ助。その後,まさつがあるほうがよいか否かについてモメる二人)


(「コロ助の科学質問箱(旧版)」、学習研究社内山安二、33ページ)

(ここで,古代エジプトでの、丸太やころを使って石を運ぶ方法や、車輪の発達の歴史について教えるコロ助
 コロ助「どうだ、ニャーゴ、人間はこんなに苦労しているんだぞ。 交通の発達は、まさに、まさつとの戦いだ。」
 ニャーゴ「うーん そういえばそうだけど……」
(ニャーゴは「逆に、まさつがなければ滑ってしまうので車も人も走れない」と主張)
 コロ助たち「うーん、わからなくなったぞ。」
(そしてコロ助達は、


(「コロ助の科学質問箱(旧版)」、学習研究社内山安二、35ページ)

という結論にたどり着く。)
 で、国立科学博物館の青木氏に まさつについて質問しに行く…といった具合になっています。
 ここでは,コロ助達に議論(ディベート?)をさせています。「まさつ賛成派」のニャーゴと「まさつ反対派」のコロ助との間で意見を戦わせ、 そして、議論の最終地点において、「まさつがありすぎれば物は運べない→しかし まさつがなくとも物は動かせない→ つまり、まさつを減らすだけでなく上手に利用することが必要だ」という、二人のもともとの意見を止揚した結論を導き出すことによって、作者が読者に理解させたい内容を 読者に感情移入させながら上手に伝えているわけです。
 それも、決して難しい表現には走ることなく、子ども達にわかりやすい形で議論を進めているところは、読んでいて本当にすごいと感じます。*1本作は内山安二の漫画家としての力量が、十分に発揮されているまんがと言えます。

旧版と新訂版の相違点(らしい)

  • 新訂版では、旧版の最後の章(天気や気象のこと)がカットされており、 また5章(空気のこと)も幾つかカットされている。
  • 2章の内容が、 旧版:「風力発電」「原子力船むつ」「ジャンボジェット」「ホバークラフト」「電気自動車」のしくみの紹介 新訂版:「スペースシャトル」「ボーイング767」「ソーラーカー」「超伝導電磁推進船」 「リニアモーターカー」のしくみの紹介 というふうに変更され、見開きの絵も書きかえられている。
  • 先頭のカラー資料が幾つか変わっている。

などの相違点があります。また、他にも台詞・まめちしき等において書き換えがありました。

*1:簡単そうに見えて,なかなかこうゆうのは書けない……

植物のひみつ

  • 作成:2009/05/14
  • 著者:藤木輝美
  • 初版:昭和49年6月30日

キャラク

  • ツルナ博士,ホップ君,メロンちゃん,ことりのピー,犬(名前不明(w))
  • ミニドリップ号


(ツルナはかせじゃなくてツルナはくしなのね……「えらあーい大先生」という説明がいい)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P1〕

ストーリー、構成

植物のなかまわけ

ツルナ博士の研究所(?)にホップ君らがかけこんでくる。
「はかせたいへんです〜〜」「どうしたね」
「となり町にコレラがでたの!!」
恐れるホップ君たち。「だれかが外国から菌をもちこんだのじゃな。」
「キン」がなんだかわからないホップ君。博士が伝染病の菌の説明をし,「細菌つまりバクテリアという植物がおこすのじゃ」という。バクテリアが植物の一種と知って驚くホップ君たち。はかせは,植物の定義を説明する。シダ植物やきのこ,海草などの性質の説明によって植物に興味をもつ子供ら。その後,はかせの提案で世界の植物を見に行く旅行にでることに。

世界のびっくり植物

ホップ君らは はかせの部屋の机の上の鉛筆大の機械に驚く。


〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P18〕

この「空はもちろん陸も地中も水中も自由じざいじゃ。ハハ…」と博士が自慢するマシン・ミニドリップ号で旅立つことに。博士らは,ミクロナイザーという薬(さわると大きさが千分の一になる)で縮小化してミニドリップ号に乗り,沖縄のマングローブ,マライ群島のラフレシアウツボカヅラなどのふしぎな植物を見に行く。*1

根のしくみとはたらき

ミクロナイザーを利用してさらに小さいサイズになった博士らは,ミニドリップ号で何かの木(作品中では種類が明示されていない)の根の近辺の地中にもぐり,根毛から根の中に入り込む。根の特徴がいろいろ説明される。導管*2から茎のほうに向かって進む博士たち。

茎のしくみとはたらき

根から葉に向かう途中で,茎の導管や師管*3の特徴のうんちくが披露される。途中で師管の細胞のあなにミニドリップ号のドリルがはまり,ピンチになったりしながらもなんとか切り抜け,葉に向かう。

葉のしくみとはたらき

葉の仕事である光合成の仕組みが説明される。メロンちゃんたちは植物の働きに感心する。ほかにも,葉が水蒸気を放出する様子なども説明される。


(この,すばらしい工場 というのが伏線です)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P56〕

花と花粉のひみつ

博士が読んだ本の「花は葉が変身したものである(by ゲーテ)」という言葉が信じられないホップ君たち。ムキになった博士は,ミニドリップ号のタイムマシンで過去に行き,ゲーテに会いに行く。*4
なぜか日本語をバリバリ話すゲーテに諭されたホップ君らは,スイセンの花の花びらなどを調べる。

たねのひみつ

たねに興味をもったホップ君は,まめを水栽培して発芽の様子を調べる。まめが発芽し葉を出していく様子が語られる。「まめ君がんばれ!!」

植物の呼吸と動物

「はかせ!!たいへんでえす!!」
泣きながら研究所に駆け込むホップ君とそれを追うメロンちゃん。
「うちのキンギョが毎日二、三びきずつ死んでいくんです!!」
博士と原因を考えていくうちに,せまい水槽に22匹も金魚を入れていたことが判明。博士たちは,ミクロナイザーで金魚と同程度のサイズになり,博士が飼っている金魚に酸素についてインタビューする(金魚語の通訳機があるらしい……)。水草光合成で放出した酸素を金魚が吸い,金魚がはきだした二酸化炭素水草がすって光合成につかうというサイクルが説明される。
ホップ君の金魚が死んだのはせまい水槽にたくさん金魚をいれて酸欠になったことが判明……動物は,植物の酸素が必要と理解するホップ君ら。
「動物は植物がなくては生きていけないかんけいにあるのじゃ。」

植物と人間の関係

(後述)

植物なんでも質問箱

植物に関するいろいろな質問とその答えが,各1ページ程度で説明される。

特徴

本書の特徴は,ツルナ博士の発明品の数々です。ミニドリップ号やミクロナイザーなど,奇想天外なアイテムが次々と登場します。これらのアイテムによって,動物などと比較して地味(?)なテーマである植物についても,飽きさせずに漫画中でうまく説明しているのがポイントです。(それにしても,タイムマシンで過去に行くわ,金魚と話すわで,なんでもありですねこの作品)
また,最後の章である「植物と人間の関係」では,「植物がなくなったらどうなるか?」という架空の状況が説明されています。これが子供のころ 結構トラウマだったので紹介します。

「植物と人間の関係」の荒廃世界

前の章で,人間も含めた動物が植物と関係があるとわかったものの,ややぴんと来ないホップ君たち。そこで博士たちはミニドリップ号で百五十年後の世界に旅立つ。
「ただし過去の世界とちがって、ほんとの世界になるか、うその世界になるかは、人間しだいでかわる世界なんだよ。」
百五十年後の世界に入り込んだ博士たち。なんと,真っ暗で寒いおそろしい世界であった。スモッグが地球をとりまいて日光をさえぎっている。
「太陽の光が地上にとどかないから、光合成ができなくて…………」「草も木も全部死んじゃったんだ。」
博士はミニドリップ号を地上に降ろす。枯れ木や動物の骨がちらばる死の世界。人間たちは酸素ボンベをしょって歩いている。


(この一連のコマがトラウマ)
〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P109〕

「公害をまきちらす工場がめちゃくちゃ地球上にふえたから、こういうことになったのだ。」「人間の工場は、緑の葉っぱの工場にはぜったいかなわないのだ。」
ホップ君たちは,荒廃した世界で苦しむ人々の「酸素よこせデモ」や怪しげな工場(酸素などを生産しているらしい)を見ておそろしくなる。しかし,もとの世界にもどるとき,博士はこういう。
「ハハハ…いま見てきた世界はきみたちの力で、うその世界になるかもしれないのだ!」「さあ、ぼくたちのいた地球にもどろう。そして、みんなで植物や動物をまもる努力をするのだ。」

このような感じで,公害問題への批判や植物の大事さなどを説明しています。この章が子供のころえらいトラウマでした。

ツッコミどころ

ホップ君が直情径行すぐる件

本書の主人公っぽいホップ君ですが,小さくなった状態でウツボカヅラの消化液に入ってものんきに泳いでたり,けっこうアレな性格です。さらに,えらい早急な性格でもあります。
「植物の呼吸と動物」の章の最初のほうで,金魚が死んだ原因がわからず,悩んでいるうちに「だれかが毒を入れたのかもしれない」と,なんの根拠もなしに思いつくホップ君。その後,「ぼくのうちへキンギョを見にきたのはメロンちゃんだけだ」「ひょっとして、きみが毒を入れたんじゃない?」といきなり決め付ける(当然怒るメロンちゃん)……お前,もうちょっと考えて行動せいといいたくなります。その後,メロンちゃんの冤罪が証明され 謝るのですが。

ツルナ博士の小学生チックな言語感覚

また,ツルナ博士もけっこうお茶目(?)感じのキャラです。冒頭のコレラ騒ぎのところで,菌が増殖する様子に驚くホップ君たちに対して,


〔植物のひみつ,昭和49年6月30日,藤木輝美,P109〕

博士,あなた一応教育者(?)なんだから「うんこ」などという小学生テイストの強い言葉を使うのはどうかと……「便」とか「糞」とか(百歩譲って)うんちとかいろいろあるでしょ(でも上の引用コマで一番問題なのは「やだあ うんこなんて食べないじゃない」などと口走っているメロンちゃんなのだが)。
こんな感じで 笑える点もけっこうあります。

*1:この過程でホップ君がいろいろピンチに立たされたりします

*2:根から葉のほうに水分を送り込む血管のような管

*3:葉で作った栄養分を根に送る管

*4:それにしても,ミニドリップ号だけでもすごいアイデアなのに,これだけいろいろ発明してる博士って…

宇宙生活・スペースシャトルのひみつ

  • 作成:2009/05/22
  • 著者:楠高治
  • 初版:昭和56年9月25日

キャラク

  • 宇宙博士,ドン太君(太めキャラ),みっちゃん,博士の部下(?)の飛行士など
  • 博士自前のスペースシャトルX号


〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P1〕

ストーリー、構成

新しい宇宙時代のまく開け

「みなさん、おはようございます。こちらはアメリカ……。ただ今より特別番組をお送りしまあす。」
 スペースシャトルコロンビア号*1の打ち上げの様子を報道しているTV番組。その様子に見入っている博士,ドン太君,みっちゃん。「わあっ発射だ!」「すてき。」「うむ……。新しい宇宙時代のまく開けだ。」
 コロンビア号は激しくジェットを噴き上げて宇宙へ旅立っていく。「スペースシャトルって今までのロケットとは形がずいぶんちがうのね。」というみっちゃんに答えて,博士はスペースシャトルのオービター*2のしくみなどを説明する。見開きカラーイラストでオービターや解剖図や打ち上げの様子が説明される。その他に,従来のロケット(スカイラブ)などとスペースシャトルとの打ち上げ方法の比較や,オービターの宇宙での活動などの説明も。
 その後,地球に無事帰還したコロンビア号。「すごい!!ぼくも行きたいよ。」というドン太君に答えて,なんと「これから宇宙に行ってみよう」と言い出す博士。


(自前のスペースシャトルをもってる博士って一体……)
〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P21〕

スペースシャトルX号出発!

博士所有のスペースシャトルX号に乗り込む博士たち。ドン太君らは 発射のショックの話*3にびびるが,スペースシャトルのショックはさほどでもなく安心。固体燃料ロケットや燃料タンクを分離し高度300キロの電離圏の軌道に乗ったX号は無重力状態に。

無重力状態のふしぎなできごと

無重力状態で体がふわふわするのに驚くみっちゃん。「まあ、わたしたち重さがないの?」「さよう、このX号の中は地球と違って無重力状態なんだ。」
「地球上の物はみんな地球の引力のために地球の中心に向かって引っぱられている。」「ところが地球を回る軌道にのった宇宙船の中では引力と反対方向の遠心力も働くので引力が消されてしまうのだ。これを無重力状態というのだよ。」
 ドン太君らは博士と一緒にいろいろな実験をする。せんをしたビンを激しく振ると,無重力状態では泡が……


(おいどんが小学生のころ,この本を最初に読んだとき最も印象に残った話の一つ)
〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P31〕

 他にも,牛乳を注ごうとしてもコップにつげない(無重力だから)とか,ろうそくに火をつけると炎が丸くなるとか(無重力だから),アイスキャンデーを溶かすと水がたれずに棒に付着して丸くまとまるは(無重力だから),ボールペンは使えないは(無重ry(ry)といった実験の数々が披露される。また,無重力の世界に長くいると筋肉が弱ることや,背が伸びることなどの説明もあり。

宇宙船の中の変わった生活

 「こんどは無重力状態の日常生活を体験しようね。必要なことはたくさんあるんだよ。」
 ドン太君やみっちゃんは(主にドン太君が)スカイラブ式シャワー*4やトイレやらを体験。ドン太君はトイレで見つけた穴におしっこをしようとして失敗,尿の玉が船内にちらばったりする……。さらに,大のほうを催したドン太君はスカイラブの横穴式トイレでウソコをすることに(……)


(これまでのひみつシリーズでは こーゆーシーンってあんま描かれなかった)
〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P51〕

 さらに,宇宙船内でおならをする場合の問題点の紹介も。セクハラっぽい質問に照れるみっちゃん(後述)。また,博士の部下らしき男性宇宙飛行士や女性飛行士(美人)が紹介され,宇宙船内での散髪や髭剃り・化粧などの説明も。

宇宙食のうつりかわり

 「ドン太君、おまちどうさま。今度は、宇宙食のコーナーだよ。」喜ぶドン太君。
 ジェミニ宇宙船やアポロ計画などの昔の宇宙食(チューブ入り,プラスチックパック食品)から,スペースシャトルの最新式宇宙食までが紹介される。また,食後の水を使わないはみがき(歯磨き粉はそのままのみこむ……)にトライするドン太君*5。その後,壁に留める形式の寝袋で眠ることに。

スペースシャトルのいろいろな設備

 翌日,X号の操縦室に案内されるドン太君ら。景気などの説明を受けている最中,尾翼に隕石が接近(?)したとの警報が。念のため男性飛行士に調べてもらうことに。宇宙服や宇宙究明ボール*6の説明も。
 その後,故障した人工衛星を回収して,地球に帰還するX号。大気圏突入時の摩擦熱や耐熱タイルの説明。「今、このX号のまわりの温度は千二百度。」「たいへん、燃えちゃうわよおっ!!」「千八百度までの熱にだいじょうぶなたい熱タイルが何万まいもびっしりはりつけてあるから安全だよ。」
 無事地球に帰還したX号。ドン太君やみっちゃんはこれまでの無重力状態から地球の重力の世界に帰ったので 体が重くてヘトヘトに。*7

スペースシャトル大活やく!!

 スペースシャトルの活躍をもっと知りたいドン太君らは,博士の自宅(?)をたずねる。アストロスコープ(宇宙大望遠鏡)やガリレオ木星探査機など,スペースシャトルと関係が深い宇宙計画の説明や,宇宙飛行士になる資格の解説。「やせすぎふとりすぎもだめ…とかいてある。」「た、たいへん、げんりょうしなくっちゃ。」

実現する夢 新しい21世紀へ
人間が宇宙に住む計画
宇宙島の楽しい宇宙生活

 未来において実現が予想される宇宙ステーション,月の資源計画,宇宙コロニーや宇宙島などの見開きイラストが示され,その詳細の解説が漫画で行われる(後述,特徴参照)

宇宙旅行・宇宙生活・クイズコーナー

 宇宙博士のともだち(らしい)クイズ博士が,宇宙生活に関するいろんな質問をクイズ形式で出題。(初期ひみつシリーズの質問箱のようなコーナー)

特徴

 本書はひみつシリーズ中期の名作の一つです。楠氏の描くキャラの面白さ,ロケットや設備などを擬人化したキャラたちの親しみやすさなど,まんが自体が優れていることはもちろんですが,宇宙生活やスペースシャトルなどの本書の題材自体が,小学生〜中学生あたりの科学や宇宙が好きな子供たちの心をグッとつかんで離しません。

自分も宇宙に行きたい!と思わせる

 特に,宇宙食無重力空間での実験の様子など,これまでの宇宙に関する既刊(宇宙のひみつ)では説明されなかった事項が非常に興味深く,科学教育の題材としても十分に利用できそうです。また,この本を読んでると,「自分も宇宙に行きたい!」とつい思うようになります(実は,この本の影響で 消防のころ 一時真剣に宇宙飛行士になりたいと思ってた……)

宇宙博士のリッチ振りに驚愕

 本書の教師役キャラである宇宙博士ですが,容貌や性格などは他のひみつシリーズと比較してさほど変哲はない*8反面,そのリッチ振りや人望がけっこうすごいです。なにしろ,前述引用の通り,自前のスペースシャトルを持ってますから。(スペースシャトルだけでも相当な金額だが,周辺の設備や着陸用の滑走路などの用地なども含めると……)。しかも,宇宙飛行士を何名か部下(?)に持ってますし。歴代の博士キャラの中でも最高レベルのリッチ振りです。

宇宙島計画の描写

 本書の中でもっとも子供たちへの「科学への希望」を抱かせる章は,「人間が宇宙に住む計画」と「宇宙島の楽しい宇宙生活」です。「人間が宇宙に住む計画」の章では,トーラス型のスタンフォードの宇宙コロニー(スペースコロニー - Wikipediaスタンフォード・トーラスの項参照)の概観や内部の想像図が漫画で説明されます。
「どうしてこんな大きなものを作るのかしら?」と疑問におもうみっちゃんに,「それなんじゃ、今、地球の人口はどんどんふえ続けておる。地球に住む人間の限界は百億といわれる。西暦二〇〇〇年には七十億に達するという計算もある。」「だが,広い宇宙なら住む場所は無限にあるからね」と,宇宙コロニーの意義を説明する博士。さらに,百万人用の〔コロニー〕もあるという博士。驚くみっちゃんやドン太君。オニール博士の宇宙島計画*9が紹介される(以下の引用コマとスペースコロニー - Wikipediaの想像図と比較してみて下さい)。


〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P114〕

 そして,「宇宙島の楽しい宇宙生活」の章では,オニールの宇宙島の生活(当然,本書執筆時は実現できてないため,想像上のもの)が示されるのですが,この生活が古きよき時代のSFで描かれる「進歩した未来世界」のようで,読んでて本当に楽しくなります。以下,いくつかその様子を紹介します。


(この他,人力飛行機などもあるらしい)
〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P118〕

 宇宙島では気象もコントロールでき,乗り物などもあり,シリンダーの中心では重力が少ないためスポーツで新記録が出せるといった話題が紹介されます。
 また,宇宙島にはイヌや猫やかわいい生き物(カナリヤ,リス,トンボ,モンシロチョウとか)*10や有益な生物(ミツバチ,牛など)をつれてくることや,人間の居住区の周辺の農業地区で野菜などを栽培する様子も描かれます。


〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P122〕

 自分は消防のころ,この宇宙島計画がいずれ必ず実現すると,無邪気に信じていました……

バラ色の希望と灰色の現実

 しかし,実際にはこれらの計画が実現する可能性は薄いのではないかと,思い始めております。

地球全体での人口の爆発的増加・資源枯渇などに対する解の一つとして注目されたが、冷戦構造が終結し各国の宇宙開発投資が抑制されていること、特に先進国においては出生率低下傾向が続いていることなどから、今のところ現実のプロジェクトとして具体化してはいない。また、仮に百万人収容できるスペースコロニーを建造できたとしても、世界の人口は一年に8000万人前後増加しているため、一年に80基ものスペースコロニーを建造してやっと人口増加分を吸収できる計算である。さらに、建築材料は月や小惑星から持ってくるとしても、居住する人間は地球から衛星軌道まで運ばねばならない。人数と費用を考慮すると軌道エレベータのような新規の輸送手段が必要である可能性もある。以上のような理由より、費用対効果の面から考えると、人口爆発の解決策として有効であると単純には言えない。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%83%BC

 上記の通り,宇宙コロニーとかを建造するゼニもそうですが,どうやって人達を地球から宇宙の軌道まで運ぶのかと(現在のスペースシャトルでは1回の打ち上げでせいぜい数名ほど)。軌道エレベータでも開発しない限り無理です。また,宇宙に棲みたがる人々 - シートン俗物記で指摘されているような問題点もあるし,http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1025302550のように,地球上の砂漠などを改良して人が住めるようにしたほうがずっとコストが低くてすむという問題もあるわけで,宇宙コロニーの実現はかなり難しいといわざるを得ない。
 「宇宙島の楽しい宇宙生活」の章の最終ページで,博士は「宇宙開発はめざましいスピードで進みはじめた。」「地球上の人々が力を合わせれば、(宇宙コロニーなどは)実現することばかりなんだよ」と言っているのですが,いま読み返すとこの希望に満ちた言葉がかなり空しく感じます。子供のころ宇宙生活や宇宙コロニーについて抱いていたバラ色の希望が,灰色の現実に変わったような感触を,いま読み直して感じています。

ツッコミどころ

下品な話題(セクハラ…)

 本書には大きな破綻とかはないのですが,一部ツッコミどころがあります。それは,前述の「宇宙船の中の変わった生活」の章で,宇宙船内でのおならの話題に触れている時の博士の質問。


〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P53〕

 赤面するみっちゃんがかわいい(ほんとは「しない」とか言いたかったのだろうが,そういうわけにもいかんのでできるだけ少ない回数にしたいという恥じらいの気持ちが感じられる)。それにしても,この後のページで「アメリカの航空宇宙局でまじめに調べた結果、一人一日に平均三回はおならをし…」とか教えているのだが,答えがわかってるんなら別にドン太君ら聞かんでもええやないかと。
 さらに,博士はこんな質問を。


〔宇宙生活・スペースシャトルのひみつ,昭和56年9月25日,楠高治,P53〕

(絶対わざと聞いとるな,このじじい)こんな感じのセクハラぽいネタが結構あるのがツッコミポイントです。

*1:1981年4月12日の,実際の打ち上げの様子の写真が用いられていた

*2:軌道船

*3:ジェミニ宇宙船打ち上げでは宇宙飛行士に10Gものショックがかかった件

*4:なぜスペースシャトルなのに数年前のスカイラブ計画のシャワーがあるのかなぞだが

*5:一見トロそうにみえて,なにげにいろいろなことに挑戦するドン太君はけっこうすごい

*6:シャトルから脱出せざるを得なくなった場合,人員が宇宙空間に逃れて救援を待つためのもの

*7:「宇宙のひみつ」ではこういう要素は描かれなかったので,妙にリアリティを感じた

*8:変哲があるのは鳥のひみつのトッチャンドリやトンチンカン科学教室のおじさんとかの種

*9:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8B%E3%83%BC の「シリンダー型」の項参照

*10:モンシロチョウはいいのか?キャベツ食い荒らすと思うが

学研まんが事典シリーズ(ひみつシリーズから分化した書籍)
1. 日本のとんち話事典
2. 世界の冒険・探検事典
3. 世界の大戦争事典
4. ようかい伝説事典(1)
5. 人名・地名おもしろ事典
6. まんがからだ事典(1)
7. まんがからだ事典(2)
8. まんがからだ事典(3)
9. ことわざ大事典
10. 偉人・英雄世界史事典(1)
11. 偉人・英雄世界史事典(2)
12. 偉人・英雄世界史事典(3)
13. 日本の偉人まんが伝記事典
14. 世界の偉人まんが伝記事典
15. まんが星座事典
16. まんがことば物知り事典
17. まんが昔ばなし事典
18. まんが恐竜図鑑事典
19. まんが日本史事典(1)
20. まんが日本史事典(2)
21. まんが日本史事典(3)
22. まんが百人一首事典
23. まんが宇宙開発事典
24. おもしろことば<語源>事典
25. 世界の超能力者事典
26. 世界の名探偵ひみつ事典
27. 昆虫おもしろ図鑑事典
28. 動物おもしろ図鑑事典
29. 遺跡発掘大昔のなぞびっくり事典
30. 歴史おもしろ図鑑事典
31. 俳句・川柳ひみつ事典
32. ようかい伝説事典(2)
33. 食べ物はじまり事典
34. 日本一古い本古事記びっくり事典
35. 日本史できごと365日事典
36. 地球環境用語事典
37. 試験に強くなる漢字熟語事典
38. 大音楽家伝記事典

新訂版(1992〜2000年前後の改定されたひみつシリーズ
1. 宇宙のひみつ
2. 恐竜のひみつ
3. からだのひみつ
4. コロ助の科学質問箱
5. 昆虫のひみつ
6. 地球のひみつ
7. 忍術・手品のひみつ
8. 科学物知り百科
9. 動物のひみつ
10. (なし)
11. (なし)
12. (なし)
13. 魚のひみつ
14. (なし)
15. 発明・発見のひみつ
16. 天気100のひみつ
17. トン・チン・カンの科学教室
18. (なし)
19. できる・できないのひみつ
20. カブトムシ・クワガタのひみつ
21. (なし)
22. びっくり世界一自然のひみつ
23. (なし)
24. (なし)
25. (なし)
26. イヌのひみつ
27. 星と星座のひみつ
28. (なし)
29. (なし)
30. つりのひみつ
31. 恐竜化石のひみつ
32. (なし)
33. 年中行事記念日365日のひみつ
34. 古代遺跡のひみつ
35. (なし)
36. まんがことわざ事典
37. 電気のひみつ
38. (なし)
39. 記号・単位のひみつ
40. いる・いないのひみつ
41. 漢字のひみつ
42. 地震のひみつ
43. (なし)
44. 病気のひみつ
45. (なし)
46. (なし)
47. 英語のひみつ
48. (なし)
49. (なし)
50. (なし)
51. (なし)
52. (なし)
53. みえる・みえないのひみつ
54. 有毒動物のひみつ
55. (なし)
56. (なし)
57. (なし)
58. 太陽のひみつ
59. 石油のひみつ
60. 地球環境のひみつ
61. エネルギーのひみつ
62. パンのひみつ
63. インスタントラーメンのひみつ
64. チューインガムのひみつ

旧版ひみつシリーズレビュー一覧

1. 宇宙のひみつ (2009/05/12)
2. 恐竜のひみつ (2009/05/14)
3. からだのひみつ (2009/05/14)
4. コロ助の科学質問箱
5. 昆虫のひみつ
6. 地球のひみつ
7. 忍術・手品のひみつ
8. 科学物知り百科
9. 動物のひみつ
10. 飛行機・ロケットのひみつ
11. 植物のひみつ (2009/05/14)
12. 海のひみつ
13. 魚のひみつ
14. 鳥のひみつ
15. 発明・発見のひみつ
16. 天気100のひみつ
17. トン・チン・カンの科学教室
18. 地球や生物のなぞをとく化石のひみつ
19. できる・できないのひみつ (2009/05/14)
20. カブトムシ・クワガタのひみつ
21. 動物・植物名まえのひみつ
22. びっくり世界一自然のひみつ
23. 世界の国ぐにびっくり旅行 (2009/05/14)
24. 野球のひみつ
25. NHKハテナゲーム魔法実験のひみつ
26. イヌのひみつ
27. 星と星座のひみつ
28. お金と切手のひみつ
29. ネコのひみつ
30. 日本のひみつ探検
31. 日本の偉人まんが伝記事典
32. 世界の偉人まんが伝記事典
33. つりのひみつ
34. 恐竜化石のひみつ
35. 電車・機関車のひみつ
36. 年中行事記念日365日のひみつ
37. 古代遺跡のひみつ
38. 自動車のひみつ
39. まんがことわざ事典
40. 電気のひみつ
41. 宇宙生活・スペースシャトルのひみつ - ひみつシリーズ等 学習漫画大全(仮)(2009-05-22)
42. 記号・単位のひみつ
43. いる・いないのひみつ
44. 漢字のひみつ
45. まんが星座事典
46. まんがことば物知り事典
47. まんが昔ばなし事典
48. まんが恐竜図鑑事典
49. まんが日本史事典(1)
50. まんが日本史事典(2)
51. まんが日本史事典(3)
52. 地震のひみつ
53. テレビ特撮のひみつ
54. 病気のひみつ
55. 南極・北極のひみつ
56. NHKクイズ面白ゼミナール教科書クイズ
57. 英語のひみつ
58. まんが百人一首事典
59. まんが宇宙開発事典
60. NHKクイズ面白ゼミナールうそ・ほんと
61. コアラのひみつ
62. NHKクイズ面白ゼミナール続・教科書クイズ
63. NHKクイズ面白ゼミナール続・うそ・ほんと
64. ロボットのひみつ(2009-05-14)
(番外編)ロボットのひみつのその後−テレボックス衝撃の真実
65. みえる・みえないのひみつ
66. 有毒動物のひみつ
67. お金のひみつ
68. 切手のひみつ
69. パンダのひみつ